いじめから逃げるため家出した先にあった、一人の人間としての自我の目覚め。家族が解体され、雇用制度が解体され、不安定になった日本を生きる私たち。

【Vol.7-1 伝統の森 IKTT 森本喜久男氏 キャリア編】

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MYGOAL 第7回目のインタビューは、伝統の森 IKTT 森本喜久男氏。

内戦で失われかけた、カンボジアの伝統の織物の復興のために、20年以上尽力されている森本さん。人と自然が共生する伝統の森。100年の伝統を甦らせた布。なにもない荒地から、豊かな森を育てあげた森本さんのキャリア、そして太く鋭い志をお聞かせいただきました。

《伝統の森 IKTT 森本喜久男氏 インタビュー記事一覧》

  1. キャリア編 いじめから逃げるため家出した先にあった、一人の人間としての自我の目覚め。家族が解体されて、雇用制度が解体されて、不安定になった日本を生きる私たち。 ←今ココ
  2. キャリア編 カンボジアの素晴らしい伝統が失われようとしていた現実。何もなかった荒地を開墾し、耕し、木を植え、0から豊かな森をつくる。「伝統の森」の軌跡。
  3. 学生にむけて編 すべてのものは「人」がいて生まれる。五感が退化している現代人が、本当にやりたいことを見つけるためにすべきこと。

僕はここにいちゃいけないんだ、と集められるだけの小銭を握りしめて逃げた。その先にあった一人の人間としての自我の目覚め。

エイミー:どんな学生時代を過ごされていましたか?

森本さん:僕は大学出てないよ。今の日本は大学出るの当たり前みたいになっているけど、僕らの時代は大学に行く人は2、3割の人くらい限られていたんだよね。

小学校3年生の時の写生大会で賞をもらって、僕はそれがきっかけで絵に興味を持った。自分は絵が好きなんだろうって自己暗示にかけたんだろうね。中学2年の時には父親が油絵のセットを僕にくれて、それから油絵を描くようになって。自分の中で大きな転機になった最初の出来事は家出かな。僕、中学2年の2月に家出しているんだよね。

エイミー:家出・・ですか?

森本さん:その日、僕は学校で悪ガキどもにボコボコ殴られていて、そしたら向こうから先生が歩いてきてたのが見えた。「ああ助かった・・」と僕は先生が助けてくれると思ったんだけど、先生は横目で僕を見て、通り過ぎて行った。それで「もう僕はここにいちゃいけないんだ」と思ったんだよね。家に帰って、集められるだけの小銭を握りしめて、電車に乗って逃げた。実家の京都から日本海岸側へ。そこから各駅電車を乗り継いでいって、気がついたら福岡の博多にいた。そこから一週間くらい野宿していたのかな。その時は冬だったからね、ホームレスの人たちが街のゴミを集めてたき火をしている中に入れてもらって寒さをしのいだ。

ある日、博多駅のベンチで寝てたら、たまたま僕を拾ってくれた寿司屋の親父がいて。お金も無くなってしまったから、3日間くらいもう何も食べていなかったんだけど、寿司屋の親父が「お前何も食べてないんじゃないか」って屋台に連れて行ってくれて。すごいよ、福岡だからさ。フグの天ぷらの屋台があって、そこに連れて行ってくれて。その時のフグの味は今でも忘れられないね。その後は銭湯に連れて行ってくれてね。それからは、その親父の寿司屋で皿洗いとして働かせてもらって。ちょっと落ち着いた時に京都の地元の友達に手紙を出したんだけど、それが父親に見つかって、福岡まで迎えに来て、京都に帰った。その出来事が僕にとって、自我の目覚めになったんだよね。一人の人間としてね。そこから僕の新しい人生が始まっていった。

15歳の時から働いて一人暮らし。知識を持つと表面にあるのものではなくて本質が見えてくる。

森本さん:中学卒業する時はもう京都にいたくなかったから、知り合いがいた鎌倉で居候させてもらって、そこで働き始めた。1か月くらい経った後は一人暮らしを始めて。絵を描くのも続けていて。僕はそんな風に15歳の時から働いてアパートを借りて、一人暮らししていたんだよね。

そこではいろんな人と出会いがあって、いろんな学びがあって。一応僕は絵描きを目指していたからね、自称アーティスト、自称絵かき、自称詩人という人と出会って、そういう人たちと夜中徹夜して議論していたんだよね。たくさんの書物を読んだよ。書物を読んで知識を持つ。知識を持つと表面にあるのものではなくて本質が見えてくる。それは、幅広くいろんなものを学ぶ中で得られるものなんだよね。

僕から見たら今の日本の企業って健全じゃない。

森本さん:そんな風にたくさんの本を読むことで、今のこの世界がどういう風に動いているのかが見えてくる。経済っていうのは商業主義、産業主義、金融主義ってね、経済勉強した?

エイミー:いえ、さっぱりです・・。

森本さん:今はカジノ経済学ってわかる?今はね、もう金融主義を超えちゃっているんだよ。今は博打で経済が動いている。株取引が肥大化して、それでお金が動いて、それに企業が振り回されている。昔の企業っていうのは、働いている人のことを経営者が考えていた。でも今の経営者はサラリーマンが多いよね。働いている人のことを考えてないよね。考えているのは株主のことさ。僕から見たら今の日本の企業って健全じゃない。いかに利益を上げるかってことしか考えていないよ。

有名なパナソニックの松下幸之助さん、京セラの稲盛さんって、ああいう人たちはそうじゃないけど、今のサラリーマン社長は、従業員の方に想いが向いてないよね。いかに株をあげるかっていうのが社長の役割になってしまっている。今は企業体の動きが違うのさ。働いている人は家族がまず解体されて、雇用制度も解体されて、社長は働く従業員のことを見ていない。それが今の現状。大変な時代だよ。

家族制度、雇用制度が日本人の人生設計や生活の安定をもたらしていた。

エイミー:家族が解体されて、雇用制度も解体されて・・とはどういうことですか?

森本さん:僕らのころはまだ家族制度が生きてた時代で、元々日本は封建制度がつくられてから3世代くらいの家族が一緒に暮らしていたでしょ。今はもう家族が孤立化させられて、核家族化って言われているけど、その日本の家族制度を解体しちゃったんだよね。あとね、僕達が子どもの頃は近所同士がすごい親しくてさ。母親が近所のおばちゃんと一緒にご飯をつくって、子ども達や父親たちは皆で一緒にご飯を食べていた。昔はそういう集まりがあったけど、今はそういった隣とのつながりっていうのは、特に都会は消えちゃったよね。

日本の企業って終身雇用っていう定年まで一つの会社で働く制度があって、それが日本人の人生設計や生活の安定をもたらしていた。僕らが子どもの時って、工場の空き地で大人たちが野菜作っていたりね。僕がしばらく働いていた国鉄、今でいうJRでは、上司が来ると部下が会議用の大きなテーブルを出して、そこでうどんを練り始める(笑)信じられないでしょ。そんなことをやっていたけれど、それが70年台後半80年代に、親方日の丸っていう三公社五現業*、例えば国鉄や郵便局が全部解体されて民営化になっていった。1970、80年代にかけて日本は急激に変身していくんだよね。自分たちはその後に生まれたでしょう。家族制度、雇用制度が解体されることで、日本っていうのは不安的な時代に入ってきた。今はそんな時代さ。

*三公社五現業:日本国有鉄道、日本専売公社、日本電信電話公社の3つの公社と郵便、国有林野、日本銀行券や郵便はがき等の印刷の事業)、造幣、アルコール専売の5つの事業のこと。

つづき!

昔のカンボジアには素晴らしい織物があり、それが失われようとしていた現実。何もなかった荒地を開墾して、耕して、木を植えて、0から森をつくった伝統の森の軌跡。

昔のカンボジアには素晴らしい織物があって、そしてそれが失われようとしていた。でも当時のカンボジアの人って「今日食べれられればそれでいい」だから、考えが未来に向かないでしょ。でも僕は日本人だから未来を見ることができる。だから調査の中で得た結論、確信を再現しようと、10、20年後を想定して、カンボジアの織物の復興のためにこの伝統の森を始めたのさ。

伝統の森 IKTT 森本喜久男氏 キャリア編より

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